ここは天界。生きとし生ける物全ての終着駅であると同時に日々神々が地上を見守り裁きと慈悲を万物に投げかける聖域でもある。
「バーン!」
「どうしたのだゲームの神よ?」
「いえ、何か、こういう登場をしなければいけない気配を感じたので」
「ふむ、して、どうかな最近人間界の様子は」
「ええ、まあ、殆どスマホゲームやらオンラインのMMOやらで特に気になる様な事は」
「どこも景気の良い話はないもんですな」
「む、あれは?」
「はあはあ…」
「あれはあの時私を呼び出した小僧ではありませんか!」
「どうしたのだゲーム神よ」
「いえ、少し前に神棚にゲームを飾り私を地上に呼び寄せた酔狂な人が居まして、それがそこに」
「馬鹿な、ここは天界ですぞ!」
「どうも」
「近いっ!どうしたのです!何故貴方がここに!」
「以前私が貴方に同じ事言った気がしますが…
いや何、この前言われて気付いた事がありまして・・・」
「…なんです」
「はい。」
「・・・」
「ゲームやれ。と。」
「ええ、その通りです。確かに伝えました、しかし、」
「」
「やればいいではないですか、自分で。何故わざわざここに」
「お伝えしたい事があり、はるばる参りました」
「聞きましょう。」
「まず、今現在、一人で毎回ゲームをするのにモチベーションが下がり続けてる事。」
「ふむ」
「そして、この前貴方様に「ゲームやろうぜ。」と握力計を壊されつつ諭された事。」
「申し訳ありませんでした、そして、」
「この前やり取りをして分かりました、ゲームをやるパートナーはこの人・・・いえ、神しかいないと。」
「はい?」
「スカウトに馳せ参じ参りました」
「いや、本来私そういう役割で地上に行ったり来たりするもんじゃありませんから」
「お願いします!」
「近いです!まず間合いを図って下さい!」
「失礼しました」
「それに一方的にそちらの要望を聞き入れるのもねぇ、、、フェアが売りな神としては気が引けますし、せめて何か理由をいくつか」
「理由といいますか、私幼少期にゲームをやり過ぎた影響で成人してから気付いたのですが、どうもプレイしたゲームの磁場というか悪い気も良い気も吸い取ってしまう、エンパシー体質とやらに陥ってしまったらしく・・・」
「それは難儀な」
「で、まあそれで良い気をもらうならまだしも、近縁や自分の身に何か起こるのではと今一歩、ゲームを真剣にプレイ出来ずに居ない状況が長く続いていまして」
「はい、で?」
「まあ、パートナーとその浄化用に神かいれば一石二鳥かなと」
「人を石等に例えるのもさることながら新年早々私利私欲も甚だしい、さっさとこの聖域から去りなさい」
「待って下さい!私が真剣であるという事をお伝えする為にこの企画の成就を願い、近隣の名所と名高い神社に文字通り行って参りました!」
「む!?」
「その証拠がこちらです」
「なんですこのトレカは?」
「企画開始に当たりお遍路に行って参りました」
「ム!」
「お納めください」
「これは?」
「ラゾーナ川崎に出雲大社の分社があるのですがそちらには御朱印等無いもので代わりに最寄りの電気店のキャラグッズを拝借しました」
「…」
「…」
「頂いておきましょう」
「どうぞ」
「貴方の誠意は伝わりました。目的も」
「ありがとうございます」
「しかし、私にもこの天界での勤めがあります。日々、多ジャンルな神と交流をし地上を見守り、時に制裁、恵みを与えるという役目が!」
「…」
「………」
「参りましょう。」
「え!?」
「神よ!何を急に」
「そんな勝手が許されるとお思いか!ここは聖域ですぞ。」
「まあ、聴いてください。まず私は独りで天界に来た苦労に報い、人間界の様子を窺いに行くという目的で彼についていきます。で、要所で戻ってきて天界での役目を務めましょう。」
「ふむ」
「それなら、まぁ・・・」
「ありがとうございます神々の皆さま!」
「それでは参りましょう」
「ありがたいんですが、来たばかりなので少し休ませてもらっては・・・」
「それなら貴方のご自宅が良いでしょう、前に呼び出された要領で神棚に一度飾られたゲームと場所があれば合掌し念を込めさえすれば、その場所にワープ出来ます。さ…手を」
「はい、いやしかしその神棚とゲームが・・・」
「いきますよー・・・はいー!」
「・・・」
「・・・」
///連射太郎宅///
「………」
「………」
「人よ」
「はい、あ、太郎でいいです」
「太郎よ、神棚はどこです」
「いや、あのあれから神棚の位置変えまして、灰皿とシェーバー置き場になってるんですよね」
「戻しなさい。」
「はい」
「ふむ、よしと。しかし上の物が気になりますね」
「センサーライトですね、暗がりで便利なので設置したんですが取り外しましょうか?」
「いえ、待って下さい。灯りを消してゲームを置いてみてはどうでしょう」
「分かりました」
「おおっ!雰囲気出てるではありませんか!」
「良いですね!」
「とりあえずセッティングはこんな所で良いでしょう。ゲームをやりたい時、必要な時は神棚にプレイしたい物を飾り、合掌して心の中で私を呼び求めなさい。さすれば以前のようにこちらの部屋に舞い降りましょう」
「ありがとうございます、南無南無…」
「そろそろ疲れてきたので、私は天界に戻る事にします。」
「お気をつけて」
「ハイー!」
「…」
「ンハイー!」
「戻るの早いっすね、どうしたんですか?」
「そういえば貴方ドラクエはどうしたんです?」
「…」
「だからやりなよぉ!」
「すいません本当に」
こうして種族間を超えた、一ゲーマーと一神の奇妙ながら不思議な交友録が始まる事となった。